今回はオーストラリア在住で、現在3歳半の息子さんの育児に奮闘する「あつしさん」にインタビューを行いました。育児にまつわる文化や価値観の違いも踏まえながら、オーストラリアの柔軟な育児環境や男性育休の実態について伺いました。
「あつしさん」はこんな人

あつしさんは2013年にオーストラリアへ移住し、永住権を取得後、現在は3歳半になる息子さんのパパです。息子さんの誕生時に2ヶ月間の育休を取得されました。今年の2月には金融系の企業を退職し、現在は独立してライフコーチングの仕事をされています。
出生後に2ヶ月の完全オフと4ヶ月の時短勤務を取得

あつしさんは、お子さんが生まれた際、最初の2ヶ月間は完全オフの育児休業を取得し、その後は4ヶ月間にわたり時短勤務をされました。
当時は、奥様が主たる養育者、あつしさんがそのパートナーという立場だったため、パートナー向けの2週間の政府給付金が出る育休制度を利用し、残りの期間を有給休暇や無給休暇を組み合わせて合計2ヶ月間、育児に専念されたそうです。
2ヶ月間というと、日本の感覚では比較的長期間に感じられますが、オーストラリアではそれほど珍しいことではないといいます。
育児における日豪の文化の違いについて、あつしさんは、「オーストラリアでは、個人や家族を大切にする文化が強く、『仕事は人生の一部』という感覚が一般的です」と説明します。この仕事へのコミットメントの違いが、日本と比べて「育休」を含めた家族との時間が取りやすい雰囲気につながっていると感じているそうです。

現在、オーストラリアでは、新生児または養子を迎える親(主たる養育者)を対象に、最長24週間(2026年7月からは26週間に拡大予定)の給付金(全国最低賃金相当額)が支給されます。育休期間を両親が分け合って取得することも可能です。
柔軟なデイケアと「遊び中心」の保育制度
あつしさんの息子さんは1歳からデイケア(保育園)に週3日通っています。オーストラリアの保育制度の大きな特徴は、その柔軟性です。
あつしさんによると、「日本の保育園と異なり、オーストラリアでは週1日から自由に保育園を利用できるのが特徴」とのこと。費用は施設によって異なり、彼らが利用する場所では1日あたり約130ドルですが、市中心部では200ドル以上になることもあります。収入に応じて補助金が出るため、補助が9割以上になる場合もあれば、共働きで高収入の世帯では補助がほとんどない場合もある、という実態も教えてくれました。
教育方針については、妻からの情報として「プレイベース」、つまり遊びを中心としたプログラムが組まれており、以前通っていた園にはモンテッソーリ教育のプログラムも併設されていたなど、選択肢が提供されていることも特徴的です。

オーストラリアの教育制度では、年齢ごとに細かく分かれているみたいです。参考までに、AIの力を借りて下表に概要をまとめてみました(州ごとに細かい制度は異なるようです)。
| 段階 | 名称の例 | 年齢の目安 | 役割 | 
| 保育 | デイケア (Day Care) /  チャイルドケア  | 0歳〜5歳頃 | 終日保育と教育ケアを提供。週1日から利用可能など柔軟性が高い。 | 
| 就学前教育 | キンディ (Kindy) /  キンダーガーテン (Kindergarten) / プレスクール (Preschool)  | 4歳 (小学校入学前1年間)  | 小学校入学に向けた体系的な教育プログラム(プレイベースが多い)を提供する。通常、週に数日または一定時間のみの利用が多い。 | 
| 小学校準備 | プレップ (Prep) /  準備学年 (Preparatory Year)  | 5歳 (小学校入学の年)  | 小学校に併設されることが多い、小学校の最初の学年(Year 0のような位置づけ)。多くの場合、義務教育の一部と見なされ、小学校生活のリズムに慣れることが目的。 | 
育休は「パパ自身の人生を見つめ直す」重要な時間になるかもしれない

今回のインタビューで、ライフコーチでもあるあつしさんがご自身の経験を振り返りながら力強く語ったのは、「男性にとっての人生を見つめ直すこと」の意義です。
「ミッドライフクライシス」という言葉に代表されるように、日本もオーストラリアも40代前後のパパは、社会的・家庭的な変化に伴い、「私の人生はこのままで良いのか?」と過去の選択に疑問を持ち、キャリアや生き方に焦燥感や葛藤を抱くことがあります。
実は、あつしさん自身も、キャリアについて思い悩んだ経験があります。自分の今のキャリアを継続していいのか漠然とした不安を抱えていた際に、友人のコーチングを受けながら「人生を取り戻せた」感覚があったそうです。
ライフコーチングを始めた理由としても、自身の体験を踏まえ、自身のやりがいや大切にしたい価値を見つめ直すことの大切さを痛感し、同じような悩みを抱えている同世代の方々の人生を支援したいという思いがあったといいます。
あつしさんは、自己を見つけることが、その後の人生の満足度を高める上で非常に重要であると語ります。

こうした自分自身を振り返る最高のタイミングが育休なのかもしれませんね。仕事から一時的に離れ、命を育む日々を送る中で、これまでのキャリアや働き方に対する価値観が大きく変化します。何が本当に重要なのか、家族との時間や健康、そして自分自身の幸福といった、譲れない大切な価値観が明確になる最高の機会ではないでしょうか。
さいごに
今回はあつしさんにオーストラリアの育児事情をお伺いいたしました。
オーストラリアの柔軟な育児環境と、「育休は自己探求に絶好の機会」という力強いメッセージは、日本の父親たちにとっても、育休の過ごし方や、その後のキャリアを考える上で大きなヒントとなるのではないでしょうか。
パパ育コミュでは、現在「育休スクールPJ」を始動し、育休を有意義なものにするための講座をパパ仲間で検討しています。あつしさんのお話をお伺いしながら、人生100年時代を有意義に過ごすために育休をどう捉えるのか、改めて考えていきたいと思いました(なんと、あつしさんにもPJに参加頂くことになりました)。
