
2026年8月1日から、育児休業等給付の申請手続きが変わりました。ただし最初にお伝えします。給付の金額も、もらえる条件も、変わっていません。
「手続きの見直し」は「給付が減る/増える」と読まれがちですが、変わったのは申請するときの事務の取扱いだけです。
一方で同じ8月1日に、育児時短就業給付金の上限額・下限額・支給限度額が改定されています。こちらは毎年8月1日に見直される仕組みで、手続きの見直しとは別の話です。混同されやすいので、この記事では2つを分けて整理します。
そのうえで、この記事がいちばん時間を使うのは別のところです。「時短で減った収入は、賃金の10%の給付では埋まりません」という前提に立ち、では毎月いくら足りなくなるのかを自分で計算する手順まで書きます。制度の紹介だけなら行政のサイトで足ります。この記事の役割はその先です。
もくじ
- まず結論:金額と支給の条件は変わっていません
- 2026年8月1日から変わった3つの手続き
- 育児時短就業給付、2026年8月改定後の金額
- 「賃金の10%」で足りるのか
- では、減る分をどう埋めるか
- 今日できること
- まとめ
1. まず結論:金額と支給の条件は変わっていません
変わったのは「事務の取扱い」です
厚生労働省のリーフレットは、見直しの趣旨を「育児休業等給付の申請手続きを行いやすくするため、令和8年8月1日から、事務取扱いを見直します」と書いています。
つまり申請書に何を書くか、どの書類を添えるかが変わったのであって、支給額の計算式や受給資格が変わったわけではありません。ここを押さえておかないと、「8月から育休の給付が変わるらしい」が職場で伝言されるうちに「減るらしい」に変わってしまいます。訂正のほうが、正しく伝えるより手間がかかります。
ただし「いつから適用されるか」は項目ごとに違います
今回いちばん見落とされやすい点です。見直しは3つありますが、「8月1日以降に申請する方から」適用されるものと、「8月1日以降に出生時育児休業を取得する方から」「8月1日以降に育児時短就業を開始する方から」適用されるものが混在しています。
東京労働局も「適用期日が異なりますのでご注意ください」と注意書きを出しています。「8月1日から変わった」とだけ覚えていると、自分がどちらの扱いか判断できません。
2. 2026年8月1日から変わった3つの手続き
出所は厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークのリーフレット『令和8年8月1日から 育児休業等給付の申請手続きを見直します』(LL080708保01)です。
① 出生時育児休業給付金——申告する賃金の考え方
産後パパ育休(出生時育児休業)の期間中の賃金について、申告方法が変わりました。
| 申請時に申告する賃金 | |
|---|---|
| 従来 | 出生時育児休業期間を対象として支払われた賃金 |
| 見直し後 | 出生時育児休業期間中に支払日のある賃金 |
「対象期間」ではなく「支払日」で見るようになりました。リーフレットはこの目的を「申請の早期化を図るため」と説明しています。締め日の関係で賃金額の確定を待つ必要が減るぶん、申請を早く出せるという趣旨です。なお出生時育児休業を分割取得する場合は、その間の就労期間に支払日のある賃金も含みます。
適用:令和8年8月1日以降に出生時育児休業を取得する方から。 申請日ではなく育休を取得する日が基準です。7月に産後パパ育休へ入った方は、8月に申請しても従来の扱いになります。
② 出生後休業支援給付金——母親の申請でも母子健康手帳の写しが使えます
出生後休業支援給付金を母親が申請する場合の、配偶者の確認書類が緩和されました。父親が申請する場合と同様に、母子健康手帳の写し(出生済証明のページで、配偶者の氏名・生年月日が記載されたものに限る)を提出できるようになります。
ただし母子健康手帳の写しで確認できない場合は、世帯全員について記載された住民票等を求められることがあります。
適用:令和8年8月1日以降に申請する方から。
③ 育児時短就業給付——書類の省略と、週所定労働時間の数え方
3つ目は項目が多く、適用の基準も分かれています。
8月1日以降に「申請する」方から適用
- 同一の子について育児休業給付を受給している場合、改めて母子健康手帳の写し等を提出する必要がなくなりました。
- 育児時短就業期間等に係る証明書(様式5例)が改訂され、開始日と週所定労働時間の確認書類として提出できるようになります。
- 時短前後の週所定労働時間の確認書類について、照合省略対象事業主等は関係書類との照合を省略できるようになります。
8月1日以降に「育児時短就業を開始する」方から適用
- 育児休業の終了後に同一の子について初回の育児時短就業を開始した場合で、育休開始後から時短開始までに賃金の支払いがないことを賃金証明書と添付書類で確認できるときは、賃金証明書の⑨欄・⑩欄・⑪欄(育児時短就業開始前の賃金支払状況)の記載を省略できます。
- フレックスタイム制・変形労働時間制・シフト制で働く方の週所定労働時間の計算方法が一部見直されました。
| 働き方 | 週所定労働時間の計算 |
|---|---|
| フレックスタイム制 | 清算期間における総労働時間の算出基礎となった1日の労働時間 × 週所定勤務日数 |
| 変形労働時間制 | 対象期間における1週間の平均労働時間 |
| シフト制 | 労働時間を該当期間の週数(暦日数÷7)で除して計算 |
シフト制の場合、時短の「前」は開始日前3か月間の実際の労働時間、「後」は賃金の算定対象期間における実際の労働時間で見ます。所定労働時間が契約で固定されていない働き方でも判定できるように整理された、という位置づけです。
問い合わせ先は育児休業等給付コールセンター(0570-200-406/平日8:30〜17:15)です。
3. 育児時短就業給付、2026年8月改定後の金額
ここからは金額の話です。出所は厚生労働省『育児時短就業給付の内容と支給申請手続』の2026(令和8)年8月1日時点版で、前章とは別の資料です。
上限・下限・支給限度額
支給額は各月に支払われた賃金額 × 10%が基本で、次の枠がかかります。
| 項目 | 2026年8月1日からの額 |
|---|---|
| 育児時短就業開始時の賃金月額の上限 | 496,200円 |
| 育児時短就業開始時の賃金月額の下限 | 96,090円 |
| 支給限度額 | 484,121円 |
- 開始時の賃金月額が496,200円を超える場合は496,200円、96,090円を下回る場合は96,090円として計算します。
- 賃金額に支給額を加えた額が484,121円を超える場合は、484,121円から賃金額を差し引いた額が支給額になります。
- 支給額が2,562円を超えない場合は支給されません。
対象は、2歳未満の子を養育するために1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業する、雇用保険の被保険者(一般被保険者・高年齢被保険者)です。雇用保険の制度なので、自営業やフリーランスの方は対象外です。
受給資格には、育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き同一の子について育児時短就業を開始したこと、または開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は基礎となった時間数が80時間以上ある)完全月が12か月あることが必要です。
なぜ8月1日に変わるのか
この上限額・下限額・支給限度額は、2027(令和9)年7月31日までの額です。パンフレットには、これらは「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定されるとあります。8月1日の金額改定は今年だけの出来事ではなく毎年起きるので、育休や時短が来年にまたがる方は、その時点で数字を見直してください。
4. 「賃金の10%」で足りるのか
制度は、時短で減った収入を埋めきる設計にはなっていません。これは批判ではなく、パンフレットの仕様から読み取れることです。
制度に組み込まれている4つの限界
第一に、給付率が10%であること。 週5日を週4日にすれば賃金はおよそ2割減りますが、給付は賃金の10%です。減った分がそのまま戻るわけではありません。
第二に、支給率の調整があること。 パンフレットには「支給額と各月に支払われた賃金額の合計が、育児時短就業開始時の賃金額を超えないように、支給率を調整します」とあります。時短の幅が小さく賃金が開始時の9割以上残る場合、10%が満額出るわけではありません。
第三に、上限と下限があること。 支給限度額484,121円で高い賃金の方は頭打ちになり、支給額が2,562円以下なら支給されません。
第四に、期間と対象が限られていること。 子が2歳になるまでで、雇用保険の被保険者に限られます。
「時短にしても10%もらえるから大丈夫」で家計を組むと、想定より少ない、あるいはゼロという結果になりえます。
財源は全世代が負担しています
もう一点。この種の子育て支援の財源には、子育て世帯以外の負担も入っています。
2026年4月から拠出が始まった子ども・子育て支援金は、公的医療保険に上乗せして集められます。会社員だけでなく、国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者も含め、医療保険の加入者が広く負担しています。 子どもがいない方も、子育てを終えた方も拠出しています。
受け取る側として、この事実は覚えておきたいところです。負担している人がいる制度だという前提で受け取るほうが、制度は長続きします。支援金の仕組みは【2026年度版】子育てのお金、何が変わった?で世帯別に整理しています。
5. では、減る分をどう埋めるか
「足りない」で終わらせないために、毎月いくら足りなくなるのかを出す手順を書きます。
差額を出す4ステップ
- 時短前の「手取り」を出す。 額面ではなく手取りです。直近の給与明細を用意してください。
- 時短後の「手取り」見込みを出す。 勤務先の人事・総務に、時短後の所定労働時間での見込みを確認するのが確実です。
- 給付の見込み額を出す。 目安は「時短後の各月の賃金 × 10%」ですが、上限・下限・支給率の調整がかかるためあくまで概算です。
- 1 −(2 + 3)を計算する。 これが毎月の不足額です。1年続けるなら12倍、2年なら24倍します。
年額まで出すことが大事です。月2万円の不足は小さく見えても、2年なら48万円です。ここまで出して初めて、貯蓄を取り崩すのか、支出を見直すのか、時短の幅を変えるのかを判断できます。
「単純に10%上乗せ」と計算してはいけない理由
3つ目を機械的に計算すると、実際より多く見積もります。賃金が開始時の9割以上残る場合は支給率の調整で10%より少なくなり、支給額が2,562円を超えなければ支給されず、賃金と支給額の合計は484,121円が上限です。
また賃金は課税・社会保険料の対象ですが、給付金は扱いが異なります。額面同士で比べると差額を読み違えます。 必ず手取りで比べてください。
ここで出るのはあくまでモデルケースです。実際の支給額は、事業所を管轄するハローワークで必ず確認してください。
6. 今日できること
- 給与明細を1枚出して、時短前の手取りを確認する
- 勤務先に時短後の所定労働時間と見込み賃金を問い合わせる
- 上の4ステップで毎月の不足額と年額を計算する
- 自分が「8月1日以降に申請する人」なのか「8月1日以降に取得・開始する人」なのかを確認する
- 迷う点を育児休業等給付コールセンター(0570-200-406)か管轄のハローワークに聞く
- 時短で標準報酬月額が下がる場合、将来の年金への影響と、それに対する仕組みがあるかを年金事務所に確認する
- 出した数字を、今夜パートナーと共有する
7. まとめ|手続きは簡単になった。家計はまだ簡単になっていない
2026年8月1日の見直しは、申請する側の手間を減らすものでした。添付書類が減り、記載を省略できる欄が増え、シフト制のように判定しづらかった働き方も計算方法が整理されました。前進です。
ただし、手続きが楽になっても、時短で減る収入が増えるわけではありません。 給付は賃金の10%で、調整があり、上限と下限があり、子が2歳になるまでです。
制度は「時短という選択肢を取りやすくするもの」であって、「時短にしても家計が変わらないようにするもの」ではありません。その差を埋めるのは、それぞれの家庭の計算と話し合いです。 だからこそ4ステップは、時短を始める前にやってください。始めてから気づくと、選べる手が減ります。
育休の取り方や手取りの計算は【2026年完全ガイド】産後パパ育休「手取り10割」の真実と取り方、復帰後のキャリアは「育休復帰=キャリアの左遷」ではないで扱っています。
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本記事は2026年8月3日時点の公表資料に基づいて作成しています。制度の内容や金額は改定されることがあり、個別の支給可否・支給額は勤務先の状況や個人の事情によって異なります。実際のお手続きにあたっては、事業所を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)または育児休業等給付コールセンターにご確認ください。
参照
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク『令和8年8月1日から 育児休業等給付の申請手続きを見直します』(LL080708保01)
- 厚生労働省『育児時短就業給付の内容と支給申請手続』2026(令和8)年8月1日時点版(PL080801保04)
- 東京労働局「【お知らせ】令和8年8月1日から育児休業給付の申請手続きを見直します」
