【一次資料で読む】未婚の35.1%が「結婚するつもりはない」——見出しにならなかった一行「家事や子育て分担の偏り」

ベッドの上で赤ちゃんと上の子を囲み、笑顔で見つめ合う父親と母親

2026年8月末、「未婚の若者の35%が結婚するつもりはない」という見出しが並びました。こども家庭庁が公表した『若者10万人の総合調査』の結果です。

数字そのものは、資料に印字されているとおりでした。この記事でやりたいのは、見出しの検証ではありません。同じ資料の別のページに、パパ育コミュがずっと話してきたことと、まっすぐつながる一行が書かれていたので、そこまで一緒に読みたいのです。

全26ページの資料を通して読み、本文と図表から数字を拾い直しました。数字はすべて、何人を分母にした数字なのかを添えて書きます。

もくじ

  1. まず、一次資料の数字を並べます
  2. 一次資料は「結婚したくない」とは書いていません
  3. 見出しにならなかった一行——「家事や子育て分担の偏り」
  4. では、自分の家の「偏り」はどこにあるのか
  5. 若い人を責める話にしないために
  6. この記事の数字について(出所と限界)

1. まず、一次資料の数字を並べます

扱うのは、こども家庭庁が2026年8月に公表した「若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)」です。報道の見出しになった35%は、資料では次のように印字されています。

結婚意欲(図表15・n=43,529)

回答割合人数
すぐにでも結婚したい9.5%4,116人
2〜3年以内に結婚したい10.3%4,471人
5年以内に結婚したい7.7%3,330人
いずれは結婚したい37.5%16,343人
結婚するつもりはない35.1%15,269人
こども家庭庁『若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)』図表15より作成。注記に「未婚者を対象として集計。離死別を含まない。」とあります。

先に、読み方の前提を3つだけ確認させてください。

(1)この設問の母数は43,529人です。「10万人」は調査の目標規模であって、答えた人数ではありません。7月23日までに回答があった人が101,950人、うち有効回答が67,905人。そこから未婚者だけを取り出して集計したのが43,529人です。

(2)この資料は「途中経過」です。資料には「全体の結果をある程度把握する観点から『途中経過』として、7月23日までに回答があった者を一旦集計。」と書かれています。調査期間は令和8年5月20日から8月5日まで。確定値ではありません。

(3)結婚意向がある人の合計は65.0%です。上の表の上4つを足した数字です。35.1%は、この65.0%とセットで見るための数字です。

2. 一次資料は「結婚したくない」とは書いていません

この資料には、「結婚するつもりはない」と答えた15,269人だけを取り出した分析があります(図表20)。そこにこう書かれています。

「結婚するつもりはない」と回答した者であっても、「結婚したいとは思わない」と回答したのは約5割にとどまる

こども家庭庁『若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)』10ページ

「結婚するつもりはない」と「結婚したいとは思わない」は、この調査では別の選択肢として扱われています。前者は見通しの話、後者は願望の話です。そして一次資料は、前者を選んだ人のうち後者にあてはまるのは約半分だと書いています。

独身研究家の荒川和久氏は、この点について「単純計算すれば積極的な『選択的非婚』は全体の約18.6%で、残りには収入や住宅への不安、相手が見つからないといった事情による『不本意未婚』が相当数含まれる」と分析しています(アゴラ 言論プラットフォーム、2026年9月1日)。同氏は、男女・年齢別の内訳が公表されていないため、20代の結婚意欲が下がったのか、30代の未婚者が結婚をあきらめた結果なのかも判別できないとも指摘しています。

報道が誤っている、という話をしたいのではありません。35.1%は資料どおりの数字です。ただ、そこから「若い人が結婚を拒否している」まで進むには、一次資料には書かれていない一歩を踏む必要がある、ということです。

3. 見出しにならなかった一行——「家事や子育て分担の偏り」

ここからが本題です。同じ調査は「結婚のハードル」も聞いています(図表16・n=43,529・複数回答)。上位はこうなっていました。

結婚のハードル割合人数
安定した結婚生活を送れる収入への不安40.0%17,433人
自由な時間がなくなる・趣味時間の短縮34.4%14,982人
結婚したいと思える人がいない32.6%14,169人
結婚のための住居や住居資金の不足30.3%13,201人
こどもをもつかどうかの価値観の違い30.1%13,110人
家事や子育て分担の偏り27.0%11,738人
同資料 図表16より、上位6項目を抜粋。複数回答のため合計は100%になりません。

6番目に「家事や子育て分担の偏り」があります。まだ結婚していない人が、結婚のハードルとして家事育児の分担を挙げている。11,738人です。

そして、男女・年齢階級別に見た分析(図表18・n=42,346)には、こう印字されています。

「結婚のハードル」として女性は20代前半までは「家事や子育て分担の偏り」が高いがそれ以降の年齢階級では低くなっている一方で、年齢階級が高いほど「結婚したいと思える人がいない」の割合が高い傾向を示している

同資料 9ページ

私たちは、家事育児の分担を「子どもが生まれてから始まる問題」だと思っていました。一次資料はそう書いていません。20代前半までの女性にとって、それは結婚する前から、結婚をためらう理由として名指しされているものでした。

さらにこの調査は、子どもがいると回答した人(16,580人)を対象にした集計で、「『仕事と子育ての両立が難しい』と感じていると回答したのは未婚・既婚に関わらず、女性に多くみられる」とも書いています。結婚前の予感と、結婚後の実感が、同じ方向を向いている——資料からはそう読めます。

4. では、自分の家の「偏り」はどこにあるのか

男性の育児休業取得率は50.9%になりました(令和7年度・厚生労働省)。数年前の40.5%から見れば、大きく動いた数字です。

ただ、取得率も家事分担の時間も、測っているのは「やったかどうか」「何時間やったか」です。上の調査が言っている「偏り」は、そこにはうまく映らないのではないか——というのが、この記事でいちばん言いたいことです。

今晩、家で確かめられる質問を6つ置いておきます。正解を出すための質問ではありません。「どちらが即答できるか」を見るための質問です。

  • 次の予防接種はいつで、何のワクチンか
  • 上履きや体操服のサイズは、いま何センチか
  • 園や学校の提出物で、今週締め切りのものは何か
  • かかりつけの小児科の診察時間と休診日はいつか
  • 今月の行事で、平日に親の付き添いが要る日はどれか
  • 名前を書かないといけない持ち物が、いま何点あるか

これらはやれば終わる作業ではなく、覚え続けていないといけない仕事です。育休を取っても、家事の時間を半分にしても、この「覚えている係」が片方に寄っていると、分担しているという実感は片側にしか生まれません。

まずは可視化から。どちらが何問即答できたかを2人で数えるだけでも、話の出発点になります。答え合わせで終わらせず、「じゃあ次の予防接種の管理はどちらが持つか」まで決められると、翌週の景色が変わります。

5. 若い人を責める話にしないために

大事な前提を書き添えます。この調査で結婚のハードルの1位は「安定した結婚生活を送れる収入への不安」40.0%でした。2位は自由時間、4位は住居資金です。上位は経済的な条件が占めています。分担の話だけを取り出して「若い人の意識の問題だ」と言うのは、資料の読み方として正確ではありません。

もう一本、別の調査からの補助線を引いておきます。日本商工会議所と大韓商工会議所が共同で行った「日韓若者意識調査2026」(対象20〜39歳の男女計4,000人)では、「生涯結婚するつもりはない」と答えた割合が日本42.4%、韓国18.6%。「恋人がいる」割合は日本21.4%・韓国32.2%、「自分たちの世代が未来を明るくできる」は日本19.8%・韓国34.7%でした。荒川氏はこれを「学習性無力感」の可能性として論じています(Yahoo!ニュース エキスパート)。

私たちに統計を動かすことはできません。ただ、いま自分の家で起きている偏りは、自分の家の中でしか直せません。そしてその一つひとつが、次の世代から見える「結婚した先の景色」になっていきます。20代前半の彼女たちが結婚のハードルに挙げたものは、私たちがいま作っている景色そのものです。

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6. この記事の数字について(出所と限界)

この記事は数字を扱うので、どこまでが確かでどこからが確かでないかを書いておきます。

  • 途中経過です。「7月23日までに回答があった者を一旦集計」したもので、確定値ではありません。調査期間は令和8年5月20日〜8月5日です。
  • 調査方法は「インターネットによるアンケート調査(調査会社に登録しているモニターによる回答)」です。国民全体から選び出した人に聞いた調査ではないため、日本の若者全体の姿とそのまま重なるとは限りません。
  • 回答者は女性に偏っています。男性24,161人(35.6%)、女性42,261人(62.2%)、その他・答えたくない1,483人(2.2%)です。
  • 資料自身が「年齢階級ごとの集計対象者数が大きく異なるため、特に全体の値を参照する際は留意が必要」と注記しています。
  • 図表ごとに母数が違います。図表15・16はn=43,529、図表18はn=42,346、図表20はn=15,269、「仕事と子育ての両立が難しい」は子どもがいると回答した16,580人が対象です。本文では図表ごとに母数を併記しました。
  • 「約18.6%」は荒川和久氏による単純計算で、一次資料に印字された値ではありません。

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本記事は2026年9月7日時点で公表されている資料に基づいて作成しています。引用した調査は途中経過であり、確定値の公表により数値が変わる可能性があります。

参照

  • こども家庭庁『若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)』(こども家庭庁 こども・若者に関する調査研究
  • 日本経済新聞「未婚の若者の35%が結婚するつもりない こども家庭庁調査」(2026年8月31日)
  • アゴラ 言論プラットフォーム「『結婚したくない』人は本当に35%なのか」(2026年9月1日・独身研究家 荒川和久氏の分析を紹介)
  • 荒川和久「『生涯結婚しない42.4%』日韓調査で浮き彫りになった日本の若者」(Yahoo!ニュース エキスパート)
  • 厚生労働省『令和7年度雇用均等基本調査』(男性の育児休業取得率50.9%)

この記事を書いた人

となりー